Ⅰ塩の製法と種類 5 イオン交換膜塩(膜濃縮塩)

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   1972年から国策により流下式塩田製塩からイオン交換膜製塩へと、塩の製造方法が全面的に転換しました
   製法転換の大きな理由は、「環境汚染が塩田に影響を及ぼすようになった」「塩事業の赤字の慢性化」「イオン交換膜製塩法が確立したため」「流下式塩田塩の生産コストが、輸入の天日塩より非常に高い」などが挙げられています


   イオン交換膜製塩は流下式塩田製塩と比べると、広大な敷地や多大な労力は必要としませんし、天候や季節に左右される欠点もありません。また最大の特徴はイオン交換膜を利用すると、塩の安全性が飛躍的にアップすることです
   しかし一部の人達は「石油系膜の樹脂が溶出して、口に入り危険だ」とイオン交換膜塩を非難しています。けれども安全性が最優先する乳児の粉ミルク、注射液、ビ-ルの水、減塩醤油、水、ジュ-ス砂糖などの製造にもイオン交換膜を利用しているのです。ですからイオン交換膜を利用した塩の批判は的外れなのです

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  イオン交換膜を利用した製塩を簡単に説明しましょう
   製塩工場は生活用水が海に流れ込まないような人里離れた場所にあります
   原料になる海水は濁りが水道水の十分の一になるまで濾過を繰り返します。これはイオン交換膜の厚さが0.1mm、膜の表面には10オングストロ-ム(長さの単位で1000万分の1mmのこと)の大きさの孔(あな)がスポンジのように無数に開いているからです。海水の濾過を徹底しないと孔がすぐに詰まってしまうのです

    濾過した海水を+と-のイオン交換膜が交互に多数並んだ 水槽に入れて、電流を流してやります(両端に陽極と陰極が置いてある)。これは海水や人の身体の中でのネラルCl Na+  K+ Ca2+  Mg2+  SO42-などのイオンの形で存在しているからです。磁石と同じで、+と-は引き合いますので、海水中の陽イオンは陰極に向かって、陰イオンは陽極に向かって移動します。このイオンの性質と+と-のイオン交換膜の性質を使って、濃い海水(鹹水)を作るわけです。この時イオンの力だけでは移動が遅いので、電流を流してやります

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   日本の南の島の海は、たくさんの熱帯魚が泳ぎ、海がきれいだと言われています。でも人が住んでいれば、また海流に乗って人糞などの屎尿、洗剤、石油など環境汚染物質、農薬、環境ホルモンなどの化学物質で海水は汚染されています
   これらの有機物や化合物はイオンの形ではありませんのでイオン交換膜を通過することは出来ません。イオン交換膜を通過するのはイオンであり、農薬、石油などの有機物や化合物などは通過しないのです


    このようにイオン交換膜は海水に含まれている人に対して良い物だけを取り入れますが、屎尿や重金属や環境汚染物質などの悪い物は侵入させない篩を持った海水濃縮装置と言えます。その濃い海水を温め、蒸気を何回も利用する省エネルギ-タイプの立釜(真空式蒸発缶)で塩を析出させます。さらに遠心分離機ニガリ分を振り払ったり、乾燥させたりすると食塩並塩ができます
    この製法は、世間で言われているような「海水の電気分解」でもなければ、また「化学物質と化学物質との合成」でもありません。使い勝手をよくするために、あえて苦汁(にがり)分を振り払い、そして乾燥させたのが「食塩」なのです
  日本以外にも台湾、韓国、クェ-トでもイオン交換膜製塩が行われています(試験的にイギリスでも)。このような大規模なプラントで生産される食塩や並塩を化学塩とか科学塩精製塩工業塩と呼ぶ人もいます

   なお食塩とは塩事業センタ-(JT)が販売している塩の商標です。他のメ-カ-は塩事業センタ-の許可なくして食塩と名乗る事は出来ません
   専売塩とは食塩、 クッキングソルト食卓塩精製塩などのことで現在は塩事業センタ-が販売しています