Ⅳ 塩雑学入門 1塩の味について

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   専売の末期には、食塩などの専売塩を販売するJT自然塩業者との対立が明白となりました。「食塩のミネラルの欠落」「イオン交換膜の安全性」また「塩の味」などについて食塩がとやかく言われるようになったのです

   塩の専売が堅牢の頃は、料亭の主人や和、洋、中華の料理人、また料理学校や料理番組の先生などは、食塩について「さらさらして使いやすく、シンプルで癖もない。吸い物、野菜や魚などの煮物、魚の塩焼、などの化粧塩、漬物などすべてに使うことが出来る。プロもアマも使っている」と絶賛したものです
    しかし塩の専売廃止が国会で論議されるようになると、彼らの多くは「食塩を舐めると辛さしか感じないが、自然塩はまろやかで奥が深く、はっきりと違いがわかる」と言い、「料理に使うと素材をいためることなく、いろいろな味を引き出してくれる」とか「お吸い物や煮物、漬物はもちろんのこと、魚に一汐当てたとき、自然海塩の天然の効果による違いがはっきりとわかる」などと、自然塩を褒めはじめたのです
   その一方で、ある和食の有名な料理人は「食べ物を食べさせるものとして、一番大切なことは食の安全で、塩といえども安全が肝要です。和食にとって塩はとても大切なものですが、永年使っていた食塩が急に使いにくくなるはずがありません。私たちはお客様に料理を食べさせるのであって、塩を食べさせるのではありません」と言い、一部の料理人などがマスコミなどを通じての自然塩崇拝への「瞬間オセロの駒変わり」を皮肉っていました

   塩の自由化が始まると、公正取引委員会、農林水産省、各地の消費者センタ-に、塩の表示やキャッチフレ-ズ、また塩の味についての苦情、質問、要望が殺到するようになりました。それに応えるために、東京都消費者総合センタ-などはいろいろな塩を買い求め、キャッチフレ-ズ、構成成分、その量などの調査、そしてモニタ-を使っての食味テストまで行ったのです
    この食味テストには食塩、「ミネラルを含んだいわゆる自然塩」、「にがりを添加した再製天日塩、「再製天日塩」、「カルシウムを添加した塩」を使いました。これら5種類の塩の舐め比べや、それぞれの塩でお澄まし、白菜漬、塩味ご飯を作って食べ比べをしたのです
   その結果が表Ⅳ-1ですが、塩の違いによる料理の味の差はほとんどなかったという結果といえましょう(食塩中心の比較をした)

   表Ⅳ-1以外に食塩とミネラル塩の塩の舐め比べをした、別の実験結果がありますのでそれをお話ししましょう
    ある女子大学の先生が、自分の生徒20人に食塩とにがりを添加した日本一の販売量を誇る再製天日塩(表Ⅳ-1のミネラル塩2のこと)」との塩味の舐め比べ(官能実験)を行いました
   結果は食塩を「スッキリとした塩味」として評価して、好きな塩として挙げた人が10人、ミネラル塩2を「まろやかな塩味」として評価して、好きな塩として挙げた人が10人いました
    このように食塩は「さっぱりとした味である」とか「クセのない味」とも評価されますし、自然塩」は「複雑な味がする」とか、「まろやかである」と評価されます。逆に舐め比べした時の欠点として食塩は「直線的な辛さの味」とか「ピリピリした舌を刺すような味」、自然塩は「「生臭みがある」とか「クセがある」と評価されます

     しかし塩は本来舐める物でもありませんし、食塩水にして飲む物でもありません。いくら舐めた塩が美味しく感じても、料理に使えばその特徴は舐めた味とは全く違うものなるでしょう。そして塩と料理には相性がありますし、料理の材料自体に複雑な味があり、塩よりも材料の方が料理に大きく影響を与えるはずです
   そもそも塩味の捉え方は、個人の好み、味覚に対する感じ方の違い、性別、年齢、人種、職業、気温、体調などにも大きく影響を及ぼすので、千差万別です。大切なことはお気に入りの塩のさじ加減と料理に新鮮な良い材料を選ぶことではないでしょうか