Ⅳ 塩雑学入門 2苦汁(にがり)

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    苦汁(にがり)が大ブ-ムになったことが数年前にありました
    女性には「痩せる効果がある」「風呂で使うと肌をしっとりとさせる」とか、男性には「禿になりにくい」「インポテンツを直す」とか、アレルギー症の人には「アトピーに効果がある」、「にがりを水に溶きその水で鼻を漱ぐと花粉症に効く」とか、また「ガンや高血圧症などの生活習慣病を予防したり、治したりする力がある」、「痔にもならない」とか、料理には「ご飯と一緒に炊くとご飯がおいしくフックラと甘く炊くことが出来る」とか、まるで何にでも効く万能薬の様な触れ込みでありました
    この特需のおかげで、ドラッグストア-やス-パ-などではにがりを棚に朝大量に陳列しても、夕方には売り切れてしまう状態がしばらくの間続きました。にがり業者や製塩業者は笑いが止まらなかったようです

   いわゆる自然塩はにがりを塩に大量に残すために、にがりはあまり採れません。しかしこの商機を逸したくないために、濃度の薄い粗悪なにがり、海水を煮詰めただけの塩水をにがり水として販売していた業者も多くありました
    また再製天日塩メ-カ-は塩を加工するだけですから、にがりは出来ません。メキシコ産、中には安全性に問題があるかもしれない中国産、インドネシア産、ベトナム産の塩田苦汁まで急きょ輸入して、販売したメ-カ-も多くあったようです

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   大繁盛していたにがり販売でしたが、にがりを一度に大量に摂取したことにより死亡者が出てしまいました。     その結果「(独)国立健康・栄養研究所」は「にがりのダイエット効果には根拠がなく、下痢や重大な健康障害を引き起こす危険性もある」と警告情報を流したのです。諺通りの「好事魔多し」で、にがりブ-ムもあっという間に終わってしまいました

    にがりの製法は大きく分けると膜法濃縮にがり蒸発法にがりがあり、膜法濃縮にがりの代表的なものとしてイオン交換膜などから出来るイオン交換膜苦汁があります
    蒸発法にがりには塩田で出来る塩田苦汁、また離島などのいわゆる自然塩の製造時に出来る釜茹苦汁などがあります
   海水から塩を採った残りがにがりですので、海水に溶けているミネラルがにがりに残り、特にマグネシウムが大量に含まれています。当然微量ミネラル超微量ミネラルも含まれていますが、海水中にはそれほど多くは溶存していません(溶けていない)

    ミネラルの身体に対しての影響も漠然としており、ミネラル同士の関連もはっきりとわかっていません。そもそも日本の塩の歴史はどのようにして塩からにがりを減らす、すなわち取り除くかの歴史でもあったのです。にがりが多いと料理を不味くしますし、下痢を起こして身体に優しくありませんでした

   また塩田苦汁釜茹苦汁は海の汚染を全て背負いこむ欠点があります。たとえ製塩工場が離島にあっても、まして観光客が押し寄せるような島では、人や動物の屎尿、洗剤などの生活用水、田、畑、庭、ゴルフ場などに使う農薬、船舶や家庭や工場で使う石油、その他の生活・環境物質などで汚染される可能性が充分あります。また中国などの放射能物質の外洋投棄も噂され大変気になるものです
    このようににがりの中には生活・汚染物質の掃溜めと形容できる製品もありそうです。ですのでイオン交換膜から作られた膜にがり以外は産地がとても大切な事ですし、色の着色したにがりは避けるべきでしょう(にがりは無色透明が普通) 

    表Ⅳ-2の様に、にがりの種類よって構成成分やその量が違いますイオン交換膜によるイオン交換膜膜苦汁には、塩化カルシウム( CaCl2・体内に吸収出来るカルシウム)は含まれていますが、硫酸マグネシウム(MgSO4)は含まれていません。硫酸マグネシウムは苦味が強いため、塩田にがりは苦みを感じるようです
    にがりはマグネシウムの栄養強化に使うのが最適ですが、お風呂で使うと「肌をしっとりとさせる保湿効果」、にがりを水で薄めたにがり水で鼻を洗うと、鼻のむずむず感がなくなりますので「花粉症に効果」、御飯に少量加えますと「フックラと美味しくする効果」などはあるようです