Ⅳ 塩雑学入門 5自然塩と化学塩

b自然塩と化学塩

   敗戦から立ち直った日本の工業化には目を見張るものがありました。資源が乏しい日本は加工貿易の道しかなく原料の輸入、そして出来た製品を海外へ輸出しなければなりません。コスト削減のためには船による大量輸送がベストですので、自ずと工場は港の近くや海に面していることが必要となります
    そのため沿岸部には鉄鋼や造船などの重工業、ガラス工業などのソ-ダ工業、石油や天然ガスを原料とする合成樹脂や合成ゴムなどの石油化学工業、製油工業などが広大な敷地求め、そして進出しました。それと同時に公害が拡散し、塩田にまで及んだのです
   当たり前の事ですが口に入れる塩が公害などで汚染されるのは大問題です


   塩の用途は食用以外に工業用途としても重要なものです。流下式塩田塩の製造コストは輸入天日塩と比べると大変高いのが欠点でしたし、また専売塩事業では大幅な赤字を出していました。折よくちょうどその頃にイオン交換膜による製塩が確立したのでした
   イオン交換膜の製塩は流下式塩田と比べると、広大な敷地もまたたくさんの人手も要りません。ですから流下式塩田と比べると製塩コストは問題にならないほど安いのです。国は安全性が確かなイオン交換膜塩を食用に、安全性は劣るが、値段が安い天日塩を工業用塩に決めたのです

    しかし多くの人はイオン交換膜の名前も仕組みも、それを使った食品や塩の安全性についてもほとんど知りませんでした。そのため一部の人は産業育成のための広大な土地確保のための塩田廃止だったと思っていたようです
    この塩の製法をイオン交換膜に転換したときから、自然塩運動」が松山や沖縄などで起きたのです。彼らは「塩田を残して、しっとりとべたつく昔の塩が欲しい」とか「食塩微量ミネラルが振り払われており、摂取は危険」と主張し、塩田塩復活のために国会議員にも働きかけをしたのです 

   それだけではなく「天日塩を日本の海水で溶解して精製した再製天日塩」「この再製天日塩に中国産のにがりを添加した塩」、また「立体式塩田を利用して作った塩」を販売したのです。これらの塩は充分に人の手が加わっていましたが自然塩自然海塩と自称しただけではありません。そして自然塩には「何十種類の微量ミネラルが含まれており、健康にも美容にも良い」とも宣伝したのでした
   自然塩を支持する一部の学者や医学者は、「食塩や並塩のミネラルの欠落は生活習慣病の原因になる」と食塩並塩批判をエスカレ-トしていったのでした。それに塩やミネラルの知識が全くないマスコミや消費者団体が「学者が言うなら間違いないだろう」と同調したのでした

   自然塩メ-カ-は、塩の品質云々を自社の特徴として消費者に発信宣伝すべきものを、根拠のない一部の学者の主張する「食塩摂取の生活習慣病の原因」「食塩は化学塩のネガティブ・キャンペ-ンをはったのでした
   しかし塩の微量ミネラルなどの有効性についてははっきりしていませんし、ネガティブ・キャンペ-ンをはったメ-カ-の塩に含まれるミネラル量も食塩と大差があまりありませんでした。また毎日の家庭での塩の摂取量僅かですので、身体に影響するほどミネラル摂取が出来ないのです

   でも彼らが広めた自然塩自然海塩」なる言葉は、私たちにとっては心地よく感じ、純粋無垢で安心して摂取ができる塩のイメ-ジがありました。現在でも多くの人にこれら情報が影響を与えており、食塩クッキングソルト新家庭塩並塩などの塩事業センタ-(JT)が販売している旧専売塩やイオン交換膜塩を化学塩、精製塩高純度塩と蔑み批判しています 

    逆に、塩事業センタ-塩やイオン交換膜塩以外の塩なら何でも自然塩、自然海塩」と呼び、まるで宝物の様に扱っている人もいます
    しかしこれだけ加工してある市販の塩を「自然塩」と自称するのはおかしなものです。自然塩を「究極の加工塩」と明快な説明をする人もいますので、「自然とは加工すること」と言った極論が鎮座するのでは・・・・・