第三章 私の名前は化学塩 332

 またイギリスの医学専門誌にも「腎不全患者にカリウムを含む食塩代替物の危険性」なる論文が発表されており、世界中の医学者などが高カリウム塩のむやみやたらの摂取に危惧を抱いているようです。

   さて江戸時代には大飢饉が東北地方中心によくありました。これは冷たい北東より風のヤマセの影響で、夏でも気温が上がらないために、稲の生育が遅れ凶作によく悩まされたのです
  大きな飢饉があると人々は、家財や娘を女郎などに売り飛ばして金を工面して、食料を手に入れたり食べ物を求めるために山野をさまよい歩いたりしました
  その時生えている野草、
木の芽、草の根、木の根などを手当たりしだい貪り食ったそうです
  その結果カリウム過多となり、高カリウム血症で心臓などをやられたために死亡者が続出したと言われています。もしこのとき塩
(ナトリウム)を同時に摂取していたら、栄養失調や野草などの毒で亡くなる人もいましたが、死亡者が激減したとも言われています

ヤマセ…梅雨頃の青森県や岩手県の太平洋側に吹く冷たい風のこと。北東の風が寒流の千島海流で、冷やされて湿気を帯びるために、濃霧などを発生させ気温低下と日照不足のために冷害をおこしやすい 

   話は変わりますが、アメリカでは死刑が宣告されると州により死刑執行方法が違います。一番多いのが電気椅子で、そして絞首刑やガス室によるによる方法、最近多くなったのが薬物利用で最終的に塩化カリウムを血管に少量注射する方法だそうです
  前に日本でも医者が患者の家族の要請を受け、末期
がん症状の患者塩化カリウムを投与して、患者をに至らしめた事件がありました
  また自殺サイトには塩化カリウム塩を静脈に注射して、自殺する方法を勧めていたサイトもあったようです。カリウムは高血圧予防に繋がるとして、まるで薬のように良い面しか強調されませんでした
 でも摂取し過ぎると死に繋がり、人を殺傷する力もある毒薬でもあるわけで「薬が毒になり、毒が薬になる」のことわざ通りの物質です

 

は高血圧の主原因として完全な悪役扱いですが、最小限摂取しなければならないのは常識です。人の身体は塩水の中に浮かんでいると表現してもおかしくなく、塩摂取なしには人間は生きていくことも出来ません
  しかし残念ながら塩のナトリウムや塩素についてはあまり理解されず、カリウムが「高血圧予防に役立つ」の長所ばかりが一人歩きしています
  でもカリウムを大量摂取すると高カリウム血症により、心臓が停止して死亡にもつなが る物質なのです

  カリウムには苦みがあり、ナトリウムの代わりに使うと料理に苦みが出るために、カリウムが多い塩は敬遠されがちでした。しかし納豆のねばねばの物質であるポリグルタミン酸が、カリウムの苦みを消すことがわかり、
50%のナトリウム分をカリウム分に代えても苦みが消えて、塩味と感じるようです
  高カリウム塩は味覚でも、また身体に優しい塩のキャッチフレーズでも私たちを欺くことが出来ますが、私達の心臓や腎臓までは欺くことは出来ないのです


 なぜ高カリウム塩を「フェイクソルト」と呼んだのでしょうか
  「塩」を広辞苑で調べますと「塩化ナトリウムが主体で、これにカリウム、カルシウム、マグネシウムを少量含むもの」と書かれていますし、百科事典で調べても同様な内容です
  図
3-5は「市販食用塩データブック」から抜き出した高カリウム塩です。これらはナトリウム分を20%から67%までカリウム分に代えたものです
  これら高カリウム塩は「塩化ナトリウムが主体で、これにカリウム・・・を少量含むもの」の塩の定義に当てはめることが出来るかどうかが甚だ疑問です

  学者の多くや厚生労働省は塩の業界の勉強会で「塩はナトリウムや塩素以外のミネラルを摂取する物ではない」と断言していました。大量のカリウムが摂取できるカリウム塩は、塩ではなく「フェイクソルト」なのです
  また高カリウム塩の使用方法を間違えると、腎臓病などの持病がある人は不幸にも亡くなる可能性が充分あります
  これらのフェイクソルトのパッケージの表面には赤色で大きく「摂取し過ぎると、高カリウム血症などにより命を落とすことがあるかも知れません」と表記して売るべきです
  普通の塩と成分が大きく異なりますから、食品売り場でなく薬品売り場で売るべきで、名前もやはりフェイクソルトでしょう

                                             前のページ 次のページ