第二章 塩の作り方を知っていますか 222

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   その結果工場の煤煙や有毒ガスによる大気汚染、排水や廃液よる湾、海、河川などの汚染が日本各地に見られるようになったのです。そして水俣病や四日市ぜんそくなどの公害病が発生するようになり、公害による死者も増え続けたために、日本人全体が明日は我が身かと震え上がったものです

  ついに海水の汚染は塩田にまで及ぶようになりました。この塩田の汚染について、塩の研究で博士号を取られたサンエス研究所の代表の杉田博士は、当時日本専売公社に勤められており「ある工場から鉛化合物塩田の鹹水(濃い海水)に入り、塩に鉛が混入した例があったが、幸い事前の検査で事なきをえた。そして重油流失に際しては付近の海水や塩について徹底的な調査を実施したりしたことがある」と話されています
  また元塩工業会の尾方博士は「塩田の欠点は大気中の汚染、海洋汚染
などすべての汚染を抱え込んでしまう点である」と述べています


   そしてかねてから研究中のイオン交換膜利用の製塩が確立したために、政府は1971年に「塩業近代化臨時措置法」を成立させました。流下式塩田が廃止され、全面的に*4イオン交換膜塩に切り替わったのです。この時政府は*5180億円もの国費を投じて、塩田所有者や労働者などの関係者に莫大な交付金すなわち賠償金を支払ったのです

*3天日塩・・・オーストラリアやメキシコなどの塩田で太陽と風の力で自然に作られた塩

*4賠償金額は現在では約1000億円以上の価値があるとも言われている

*5イオン交換膜塩・・イオン交換膜製塩は水の流れと同じ物理作用で海水を濃縮する方法で、ビールの水、粉ミルクなどにまで使われている膜である。出来た塩の安全性は大変優れている(詳しく後術する)

しかしこの政府の決定に異議を唱えた人たちも多くいました。イオン交換膜塩を阻止しようと、また塩田を継続させようと、塩出啓典参議院議員や山田勇参議院議員(横山ノック)などの国会議員にも働きかけたのです

   議員達は「イオン交換膜に関する安全性がはっきりとしないので、塩田による製法からイオン交換膜製法に転換を延期すべきだ」とか「また消費者が、塩田塩を自由に購入できる道を残して欲しい」とか「イオン交換膜製法の塩の安全性についての動物実験を早期に実地すべきである」などと国会で要望したり、質問したりしました


   このイオン交換膜塩について参議院決算委員会で「天日で製塩したものより若干ミネラルが下がるが、一日に摂取する他の食品からのミネラル摂取量を考えると、ほとんど影響はない」と厚生省は答えています
  そして日本専売公社は「イオン交換膜の成分が溶出するということはありえない。欧米では飲料水やビールや牛乳やジュースの精製などに広く使われており、動物実験などのデーターはないが、
イオン交換膜の安全性は保障されている」と国会議員たちの質問に答えていました
  また私たち国民には「塩と健康問題の解説」などを配布して、「イオン交換膜法による塩について、その成分の上から考えても、また
イオン交換膜成分の溶出という点から見ても全く危険はない」と解説をしていました


   しかし当時イオン交換膜などの名前は一般的でなく、TVや新聞で初めて名前を見たり聞いたりした人がほとんどだったわけです。理科知識の希薄な私達に誰でもとは言いませんが、製塩の仕組みなどをある程度わかるように噛み砕いた説明が必要だったのでしょう
  そしてイオン交換膜利用の塩がなぜ今必要なのか、この塩にするとどういう利点があるのか、なぜ逆に塩田塩
ではだめなのかをもっと詳しく説明すべきでした。一部の塩田が公害で汚染されている(汚染される危険性がある)なら、それを私達に公表すべきだったのです。また塩事業の大幅な赤字も包み隠さず話すべきでした

  それらの説明が不充分で、「海の物とも山の物ともつかないイ
オン交換膜製法塩を受け入れよ」とはどだい無理な話だったのです。自然塩擁護派などは「すべて99%以上の*6高塩化ナトリウム塩で、いわゆる塩田塩タイプのニガリ分が少し含まれ、水分が多い塩を国民に選択させなかった」と今でも言い、すなわち国の画一的な製品の押しつけに対する反発も大変強かったようです。彼らは塩の製法転換は単に塩事業の赤字を黒字化するために、効率のよいイオン交換膜利用の塩にするための塩田廃止にしか思えなかったようです

  もっと私たちにイオン交換膜利用の塩についての説明や協議などをすべきで、「昨日まで食べていた塩田塩が今日からは駄目」では誰もが納得しないのが当たり前のことだったと思います。このように「イオン交換膜製法」への転換は異議が続出したのでした

 

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