第四章 自然塩 正体見たり 不純物  421

第二節 消費者庁の影に怯える人々 

どこの世界でもルールを守らない者やモラルの欠如した者が必ずいます
  塩の世界でも同じことでした。塩の専売制の終了前から、自然塩業者の中には「自然塩はミネラルが豊富で身体に役立ち、摂取し過ぎても高血圧にもならない」と言い、自然塩性善説を唱えて自然塩の販売促進に努めていたのでした
  逆に「食塩は化学塩なので、摂取することは大変危険である。おまけにミネラルが欠落しているので、生活習慣病の原因ともなっている」と食塩性悪説を唱えて批判していたのです

  これらは科学的根拠がない、売らんがための嘘も方便で、彼らの塩が私達の手元に渡るときは、白い塩も嘘まみれの黒い塩に変わっているのではないかと心配したものです。このように当時の塩業界は大変モラルの劣る業界だったのでした
  食塩は国が関与していたのでシェアーや認知度が抜群で、自然塩と食塩の戦いはまるでアリと象の戦いと言っても言い過ぎではありませんでした
  この塩戦争に勝つためには、また生き残るためには、ウソや私たちが錯覚するようなことも言ったりしたりしなければなりません
 私が製塩業者ならきっと食塩は「化学塩」、「ミネラルが少ない」と大声をだしながら、自分自身を叱咤激励して営業していたと思います

  でもエンリッチを販売している大阪のマルニ、静岡のあらしお、小さな海・天草の塩、味の素などは食塩批判をほとんどしませんでした。自社の品質と特徴を全面に出した営業方法を展開して消費者の支持を得ており、他の大手再製天日塩メーカーなどとは営業方法が全く異なっていました

   塩には塩専売法(大蔵省)という強力な法律がありましたので、化学的根拠のない自然塩擁護の学者や自然塩業者が発する食塩批判や罵詈雑言に対して、専売法を盾に監督官庁の指導があってもおかしくありませんでした
  「嘘は嘘」「間違っていることは間違っている」と指摘すべきでした
  けれども歴代の大蔵省たばこ塩審議官などは「官が民を圧迫するのはよくない」を建前としていましたので、食塩批判に対して我関知せずの態度を取ったわけです
  大蔵省は上意下達の組織ですので、専売公社や
JTなどがその意向を受けるのは 当たり前のことなのです

 

当時のJT(専売公社)は食塩水の中のアサリの開口実験のように自然塩業者に根拠のない批判をされても口を固く閉じ、全く動かない、いや反論しないまるで打たれ強いサンド・バック状態でもありました
  塩の表示においても、専売制の終わり頃の自然塩業者のやりたい放題が現実で、
他の食品には類を見ないほど多くの虚偽表示が存在していたのです
  一部のメーカーは自社製品を売るために、違法またはすれすれの宣伝を繰り返したのでした。またシェアーの大きい塩事業センター塩や再製天日塩メーカー塩を狙い落とすために、デマや中傷も平気で流す業者もいました

  充分加工してあっても、また自然に出来た塩でもないのに「自然塩、天然塩」とか、「ミネラルが豊富で身体によい塩」、「ミネラルがたっぷりなので美容によいお塩」など表示しで、他の製品より優秀であると私達に訴えていたのです
  また製造方法のまやかしや、中国産の天日塩なのに国内の地名をつけて日本産と勘違いさせた塩などが多くありました
  塩の業者の間では「虚偽表示、皆ですれば怖くない」と言う標語が出来た噂があったくらい、優良誤認の誇大表示や産地偽装表示をしていたメーカーが多くあったのです


   塩の安全性は厚生労働省が「食品衛生法」で、製品の表示や品質などについては農林水産省が、パッケージなどの表示については「景品表示法」などで公正取引委員会などが目を光らせるべきでした
  しかし専売制下では予算権限を持つ財務省(大蔵省)に遠慮があったのか、何を表示しても、またどのような製造方法でも大蔵省は見て見ぬふりをしておりました


 この自然塩や天然塩やミネラルなる言葉に対して、異議を唱えたのが東京都などでした
  そしてやっと公正取引委員会もやっと重い腰をあげ、曖昧なキャッチフレーズを取り締まることに方針を固めたのでした
   「自然塩」や「天然塩」また「ミネラルたっぷり」「ミネラル一杯」「ミネラル豊富」「ミネラルバランスが良い」「天然のミネラルが一杯」「美容によい」「健康によい」などのミネラルに関する表示などを使用することを禁止にしたのです

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